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尿に血が混じった(血尿、尿潜血)

泌尿器科で主に診察の対象となるのは、当たり前ですが尿になります。

尿の異常の中でもいちばん多くいろいろな病気が潜んでいるのが血尿、つまり尿に血が混じっている状態、です。目で見て血が出ている血尿(肉眼的血尿)だけではなく、健康診断や人間ドックにて尿潜血という形で異常を指摘されることも含まれます。

血尿の原因としては細かいものに分ければキリがありませんが、大きく分けて4つぐらいに区分けしています。

その4つは、⒈炎症、⒉尿路結石症、⒊悪性腫瘍(がん)、⒋その他の病気です。それらの中でさらにそれぞれ細かく分かれます。

⒈炎症 炎症と言っても急性のものと慢性のもの、感染(菌などにかかってしまうもの)といわゆる腎臓病に分かれます。つまり急性の感染症としては、急性膀胱炎、急性腎盂腎炎、急性前立腺炎、急性尿道炎等の尿路及び生殖器に細菌やウィルスが感染して炎症を起こすものがあります。また慢性の感染症としては、慢性前立腺炎のように血流の鬱滞(うったい)などが原因で炎症を起こすものがあります。

もう一方のいわゆる腎臓病については、糸球体腎炎のような腎臓の機能している場所に炎症を起こすことで腎臓の働きが弱っていく病気です。イメージとしては、腎臓がザルのような働きをして血液から体に必要な成分をこし出していらないものを尿として出す仕組みになっていると考えてください。そのザルとしてこし出す働きの腎臓が傷害されてザルの網の目が壊れてしまったことで血液中に含まれている体に必要なタンパク質が尿に漏れだしてしまう状況が糸球体腎炎に代表される腎臓病のイメージになります。壊れたザルの部分からタンパク質だけではなく血(赤血球)も尿に漏れ出しているために血尿となります。腎臓病は慢性炎症で難治性のものではありますが、それ以外の感染は急性の一過性のものであり適切の対応すれば治癒できるものが多いです。

⒉尿路結石症 結石症とは腎臓から尿に電解質(ミネラル、塩分など)を排泄する時にそれらが過剰に排泄されることで結晶として固まって結石ができてしまうという病気です。尿の通り道に結石ができてしまう病気を一般的に尿路結石と呼びます。尿路結石は、大きく上部尿路結石と下部尿路結石に分けられます。上部尿路結石は、腎結石と尿管結石があります。つまり、結石が腎臓内部の腎盂という尿が流れるスペースにつまったり占拠して腎臓の働きに傷害をきたすことがある腎結石症と、腎臓でできてしまった結石が尿を出すための通り道である尿管に落ち込んで詰まってしまい尿の流れを堰き止めてしまうことによって痛みが生じる尿管結石症があります。

尿管結石症に関しては、尿管という細い管に結石が詰まって直接痛みが出るように思われがちですが、実際は腎臓の部分が痛んでいることが多いです。結石が尿管に詰まったことにより腎臓からの尿の流れが止まり腎臓全体が腫れてしまう水腎症という状態になることで腎臓を包んでいる膜が引き延ばされることが痛みの原因と考えられています。つまり、尿が流れずに腎臓が腫れることによる痛みですので腎臓の近くでつまっても膀胱の近くの下腹部のほうで結石がつまっても、傷む場所は腰背部(腰のあたり)が痛みます。下っ腹の方にやや違和感や痛みがあることも確かにありますが、それらは放散痛という腎臓の周りの痛みが波及している痛みとも考えられます。このような尿管結石の痛みは三大疼痛と言われているように痛みのベスト?ワースト3の一つに挙げられるほどの激烈な痛みですので救急病院に駆け込む方も少なくない病気です。血尿はその結石が尿の通り道である腎盂や尿管の粘膜にこすれることで出血していることが原因であり尿路結石症と診断するための一つのサインになります。

下部尿路結石は、それらより出口に近い膀胱や尿道にある結石、つまり膀胱結石症と尿道結石症です。膀胱結石症は、普段からおしっこの出が悪くて残尿があるなど菌の感染が起こりやすい状況で起こりやすくなります。尿道結石は通常はあまり起こりませんが、前立腺肥大症や尿道狭窄症があり尿道が細くなっている状態でつまってしまうことで起こります。それらも結石がこすれてしまったり同時に感染することで血尿が起こります。

⒊悪性腫瘍(がん) 血尿の原因となる尿路の腫瘍は良性のものというより悪性腫瘍つまり癌が主体となります。血尿の原因としての悪性腫瘍は、腎癌、腎盂尿管癌・膀胱癌(尿路上皮癌)、前立腺癌、尿道癌があります。前立腺癌は本来は尿の通り道とは別になりますが、前立腺を貫くように尿道が通っている関係で前立腺癌が進行して尿道に進行した場合には血尿が症状として出る可能性があります。腎臓や尿路上皮癌(腎盂尿管癌、膀胱癌)尿道癌は尿の通り道にできる悪性腫瘍です。悪性腫瘍で尿に血が混じるのは、がんは血の巡りがいいことに加え周りに浸潤していくためです。そのために血尿となりますが、結石のように尿の流れを急激に堰き止めたりせずに進行していくことが多く痛みなどの症状が出ないことが要注意です。痛みのない血尿は逆に悪性腫瘍などの怖い病気の可能性があると考えて早期受診し精査をしていただくことをお勧めしています。

⒋その他の病気 その他の病気はAVM(動静脈奇形)、ナットクラッカー症候群などがあります。AVMは腎臓の中で動脈と静脈が短絡(つながってしまう状態)してしまい静脈の圧力が高くなって腎臓から出血し血尿になる病気です。もともと、血管は動脈から高い圧力で臓器に血が送られてきて毛細血管を通って臓器に供給され静脈で心臓に戻っていく仕組みですが、動脈から直接静脈につながってしまう奇形があると静脈が耐えうる圧力以上に高くなって出血してしまう状態になります。また、ナットクラッカー症候群は、同じように静脈の圧力が高くなることが原因です。この病気は、腎臓の静脈が体の中心の大動脈と腸に血液を送る上腸間膜動脈との間に挟まれてナットクラッカー(くるみ割り機)のように腎静脈を挟み込んで腎静脈の通りが悪くなり圧力が高まるようになります。その結果、静脈内の圧力が高まり腎臓に負担がかかることで血尿が出てしまう状態です。内臓脂肪が少ない痩せ型の人がなりやすい病気と考えられています。

それらのいろいろな原因を検査により探索し明らかな原因がわからないこともあります。その場合は、腎臓から少し出血している特発性腎出血として経過観察として様子を見る方針となります。

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