男性の更年期障害
女性の更年期障害は一般的ですが、男性にも、
加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)とよばれる、更年期障害があります。
加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)は、男性ホルモンの低下により、精神状態が不安定になったり、異常な発汗やほてり、めまい、性欲減退等の症状が現れる病気です。
主な症状
- 抑うつ状態になる
- イライラする
- 疲労感が抜けない
- 異常な発汗がある
- ほてりが止まらない
- めまいや頭痛がすする
- 良く眠れない
- 性欲があきらかに減退した
- 勃起しなくなった
診断
LOH症候群と診断するためには
1.加齢による性腺機能低下を示唆する症状
精神症状(抑うつ、不安、疲労感など)、身体症状(睡眠障害、記憶や集中力の低下、疲労感、筋力の低下、骨塩量の低下など)、性機能症状(性欲低下、勃起障害など)があります。
これらの症状の有無や程度についての評価に質問票を用いています
AMS(Aging Males' Symptoms)質問票を主に使用します。(他にADAM(Androgen Deficiency in the Aging Male)質問票もあります)
AMS質問票の評価としては、
17〜26点:男性更年期障害ではない
27〜36点:軽度男性更年期障害の可能性 一度テストステロンを測定してください
37〜49点:中等度男性更年期障害の可能性 泌尿器科へご相談ください
50点以上 :重度男性更年期障害の可能性 泌尿器科へ受診し治療をご相談ください
診断としての質問票の有用性について疑問視する報告もありますが、治療の効果の目安になります。
下述のテストステロンとは筋力低下と性機能低下の項目が関わりがあるのではないかと考えられています。
2.血中テストステロン値の低下
テストステロンはいろいろな形で存在していることがわかっています。男性ホルモンとしての働きを持つテストステロンは,SHBG結合テストステロンを除いた遊離テストステロンとアルブミン結合テストステロンと考えられています。
日本においては,遊離テストステロンの年齢別の基準値についての報告をもとに,血中free testosterone(遊離テストステロン)値8.5pg/mLがLOH症候群に対して治療介入を行う基準値とされています。 日本人では欧米人と違い、LOH症候群の症状悪化とともに総テストステロン値は変化せずに,遊離テストステロンが低下することがわかっています。国際的には総テストステロンかSHBGの測定・計算による生物学的活性テストステロンを基準にすることになっていますが,日本では総テストステロンの変化が乏しいことと保健診療の問題で総テストステロン値を基準にすることは今まであまり行われていませんでした。
2021年改訂版LOH症候群診断の手引きでは、変更となりました。
総テストステロン ≧300ng/dl 、遊離テストステロン ≧7.5pg/ml
(ただし、テストステロン補充療法が必要かどうかは他の因子も考えて決定する)
今後はこの基準で加療を検討していくこととなります。
3.加齢以外の他の病気がないこと
以上これら3つの項目の確認が必要と考えられています。
治療
薬物による治療が一般的です。テストステロン補充療法(筋肉注射によるもの、テストステロンゲル製剤)があります。
注射剤 エナルモンデポ 125-250mg を2週から4週ごとに投与
テストステロン補充療法の有害事象としては、多血症、睡眠時無呼吸症候群、脂性肌、心血管系障害、肝障害などと言われていますが、心血管系障害はテストステロン補充療法により活動性が上がったことに起因する可能性が言われており直接の副作用ではない可能性も考えられています。また、テストステロン補充療法をすることが原因で前立腺癌の再発、進行もないと証明されています。
ただ、テストステロン補充療法の前に、PSA(前立腺特異抗原)2ng/ml以上の場合は前立腺癌の可能性が否定できないためテストステロン補充療法は行わないように推奨されています。